ムダな情熱
これは、あるつぶれそうな10人の劇団の物語。
団長は、最高のコメディーを作ろうと、脚本作りに悩んでいた。

全体の流れ、構成はほぼ完成したが、冒頭部分に納得できるシーンが思い浮かばない。
観客が裏をかくような最高のギャグをつくってやる。来る日も来る日も団長は考えていた。

舞台公演開始まで残り3日と迫った日のこと。
団員:「団長、冒頭部分は置いといて、その先のシーンの練習をさせてください」
団長:「ダメだ。ダメだ。しかたない、こうなったら台本を1から書き換えるか」
団員:「何いってるんですか。このままでは舞台は…。」
マネージャー:「あんたのやっている事は、ムダな情熱だ。どれだけ周りを巻き込めば気が済むんだ。
才能のないものがいくら努力したってムダなんだよ。あんたも身の程を知るべきなんだ。」
団長:「ふん。勝手にしろ。そんなに練習したいなら、お前達だけで練習を進めろ」

団長はふてくされて引き上げる。
それから数日、団長が練習に顔を見せることはなかった。
団長は必死になってギャグを考えながら悩んでいた。
(やっばりオレにはギャグを考える才能がないのかな。そうだ、この薬を飲んで死のう…)

そして本番当日、ようやく団長が顔が現れた
団員:「団長、最高のギャグは思いついたのですね。」
団長:「いや、さっぱりだ。舞台は中止しよう」
団員:「今さら何いってるんですか。さ、舞台が始まりますよ」

そして舞台が始まり。団長のセリフ
団長は、思わずセリフを噛んでしまい失敗したかに思われた。
だが、それが観客から最高の笑いを引き出すことになった。
観客は舞台に引き込まれ、大盛況のもと幕を閉じた
団長:「やっぱり、オレって天才だな。がはははは」

翌日、マネージャーは辞表の手紙を残して姿を消した。
そして数ヵ月後、マネージャーから劇団宛に1通の手紙が来ていた。
「以前、私は弁護士を目指していました。しかし5回も司法試験に落ちるうちに、
人生をあきらめるようになっていました。
そんな時にこの劇団に出会いマネージャーをさせていただきました。
団長が最高の舞台を作り上げたとき人間あきらめずに夢を追いかければ成功するのだと思いました。
今の自分にどこまでできるかわからないですが、もう一度、ムダな情熱に賭けてみたいと思います。
あきらめなければ、いつか夢は叶う。そうですよね。あのときはお世話になりました」
追伸 〜〜〜〜〜